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かきのきのあるいえ
柿の木のある家
壺井 栄
「柿の木のある家」山の木書店、1949(昭和24)年4月20日<br>「海のたましひ」大日本雄辯會講談社、1944(昭和19)年6月14日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 15,460 字 · 32 页
おとうさんの小さかったころには、村にはまだお菓子やの店がなくて、あまいものといえば、お砂とうだったということです。子どものおとうさんは、黒ざとうをもらうことがたのしみで、その黒ざとうは、柿の葉の上にのせて、もらっていたといいます。柿の葉を、おさとうのはっぱだと、小さいおとうさんはいっていたという話を、いつかきいたことがあります。あの、つるつるとして、きれいに光っている柿の葉は、ほんとうにおさとうをのせるのに、つごうのよい葉っぱです。秋がきて、だんだん柿の葉が落ちてゆくことは、おしくてならなかったけれど、葉が落ちるとおさとうはもらえないかわりに、柿の実はちゃんと赤くなるのは不思議だったと、三太郎おばさんも話したことがありました。
そんな小さい時のおとうさんたちの姿も柿の木は知っているでしょう。柿の木はそれをどこにおぼえているのでしょうか。
「柿の実はなぜ、あーおい。」
「まだしぶいから、あーおい。」
フミエと洋一は柿の木の下で、去年も歌った、ふたりの歌を、くりかえしました。
「柿の実はなぜ、あーかい。」
「甘いから、あーかい。」
「柿の葉はなぜ、あーおい。」