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かきいろのかみふうせん

柿色の紙風船

海野 十三

「新青年」1934(昭和9)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,032 字 · 28 页

青空文庫

の間に巧みに貼り込まれてしまったのだった。

「いやァ。――」ポン。

五十嵐は同じ調子で、そのラジウム入りの風船をひっくりかえした。私はチラリと彼の顔を見たが、彼は口をだらしなく開いて、眼は睡むそうに半開になっていた。彼は私の大それた計画に爪ほども気がついていないらしかった。私は大安心をして、ポーンと丸い色紙を貼りつけたのだった。五十嵐はその柿色の紙風船に見向きもせず、腕をサッと横に伸ばして今まで出来た紙風船の上に積みかさねた。そこへお誂え向きに検査係が来て、その一と山の紙風船を向うへ持っていった。私はうまくいったと心中躍りあがらんばかりに喜び、ホッと溜息をもらした。

こうしてラジウムは、柿色の紙風船の中に入ったまま、私の手を離れていったのだった。

それから後の話は別にするほどのこともない。私は予定より二週間ばかり早く、刑務所を出された。出るときは、果してあの帆村とかいう探偵立合いの下に、肉ポケットの中を入念に調べられたが、それは彼等を失望させるに役立ったばかりだった。私が出所したあとで、私の囚人服や独房内が、大勢の看守の手で大騒ぎをして取調べられていることだろうと思って、噴き出したくなった。