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かきいろのかみふうせん
柿色の紙風船
海野 十三
「新青年」1934(昭和9)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,032 字 · 28 页
人生の名誉を賭けたあのラジウムを、そんなに簡単に失ってなるものかと歯ぎしり噛んだ。
「一体どこで失ったんだろう?」
私はあの日からのちのことをいろいろと思い綴って見た。いろいろと考えられはしたが、結局しっかりしたことは判らない。しかし一旦糊で紙の間に入れたラジウムが、こんな短期に脱け落ちるのはおかしい。といって風船が違ったわけでもない。この柿色の風船のように、半端な色花びらを接ぎ合わせたものは外にない筈だ。
私は同じことを、いくたびも繰り返し繰り返し考え直した。考え直しているうちに、ふと気がついたことがあった!
「おお、あれかも知れない」
私はムクリと起き上った。
「いや、あれに違いないぞ。うん、そうだ」
私の全身には、俄かに血潮の流れが早くなった。手足がビリビリと慄えてきた。
「よォし、畜生……」
私は戸外の暗闇に走り出でた。
さてそれから後のことを、どう皆さんに伝えたらいいだろうか。私はすこし語りつかれたので、結末を簡単に述べようと思う。その結末というのは、恐らく、もう皆さんの目にハッキリと映っていることと思う。そういって判らなければ、もっと明瞭に云おう。