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ねづよいほくりくぶんか
根強い北陸文化
中谷 宇吉郎
「北陸中日新聞」1960(昭和35)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,811 字 · 4 页
あの時代は少し特別だったかもしれないが、北陸とくに金沢には、こういう特殊の地方文化が育成される基盤は、今日までつづいているように思われる。この基盤は、前田家の百万石の文化につらなるものであろう。
その感を深くしたのは、最近機会があって、金沢を訪れたときのことである。兼六園内に新しく出来た美術館で、名宝展を見たが、これはまことに驚くべきものであった。仁清の鶴の香炉はいうまでもないが、足利時代にまでさかのぼるといわれる能衣装の豪華さ、古九谷の逸品など、目を見はるものが相当にあった。絶対価値からいえば、もちろん国宝展などには及ばないが、驚くべきことは、これらの名品が全部、石川県下の隠れた収集家の手元から出品されたという点である。隠れたというのは、ジャーナリズムなどに騒がれないという意味である。
仁清の鶴の香炉は、最近美術館に寄贈されたもので、国宝の中でも一級品と認むべきものである。これなども代々金沢市内のごく普通の家に伝えられてきたもので、その家は茅ぶきの屋根に石を置いた家であるという。美術が土に根ざした土地という気がする。
金沢が今度の戦争で、爆撃にあわなかったことは、金沢のためばかりでなく、日本の文化のためにもありがたいことであった。