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けいまのげんそう
桂馬の幻想
「小説新潮 第八巻第一六号」1954(昭和29)年12月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,784 字 · 28 页
ほら。ほらしょウ」
木戸の頸に手を当てがって人形の首のように柱にがくがく叩きつけた。
「ほらしょ。ほら。ほら」
次に左右から両頬へ平手うち。木戸は目をとじて、歯をくいしばり、時々呻きをもらすだけ。
「目をあいて、オレを見な。オレの目を見な。お前の性根はくさっているぞ。お前の魂はまだ将棋指しの泥沼からぬけていないよ。人間は自然の子だ。カボチャや大根と同じものだぞ。ちっとも偉いことない。まだ、わからないか。このガキ!」
チョイとアゴを押して、ゴツンと頭を柱にぶつけさせた。なるほど、気のせいか、手荒という感じがしない。しかし、とにかく怪力である。チョイと押されてコツンと後頭をぶつだけでも痛そうであるが、いかにも愛情のこもった感じに見えてきたからフシギである。これが母親の愛情か、たしかに、どことなくなつかしいようなオモムキもあるなと野村は感心したのであった。娘教祖は木戸のいましめを解いてやって、
「むかしの仲間だ。ゆっくり話し合うがよい。オレに気兼ね遠慮するな。ウソをつくのは、なお悪いぞ。思うように語りあうのが何よりだ。その間にオレがイモでも煮てやるからな」
と土間へ降りてガチャ/\やりはじめた。