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くわのむしとこせがれ
桑の虫と小伜
佐藤 垢石
「釣趣戯書」三省堂、1942(昭和17)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,760 字 · 4 页
いつも山ぶどうの虫や、蛆を餌にしてはやを釣るのであるけれど、この朝は桑の虫だけを餌につけたところ、はやの嗜好に適したか、素晴らしい大漁をした。伜に、はやの脈釣りの鈎合わせの呼吸を伝授したのも、このときであった。伜はこのごろ、はや釣りには一人前の腕になっている。
そんなことがあってから、今度は笹の葉の虫を使ってはや釣りを試みた。これも、甚だ成績がよろしい。笹の葉の虫は、笹の葉を筒に巻いて糸で絡げ、なかに棲んでいる。やはり、桑の葉の虫と同じ位の大きさの、青い虫だ。
私の伜は、私と同じように釣りが好きである。それは、三歳のときから釣りに連れて行ったためであるかも知れない。
もっとも、三歳であったから竿は持たせなかったが、幼い伜は奥利根の寒風の河原を、よちよち歩きながら、私の釣りする姿をながめていた。その後、鮒釣りにも泥鰌釣りにも伴って行った。六、七歳の頃になると、鰻の穴釣りに、私のうしろを魚籠をさげて歩いた。赤城山麓の方から、榛名山麓の細流まで、二人で鰻の穴を捜し歩いた。前橋の敷島公園に続く清水の穴で釣った大鰻のことは、いまでも忘れられないでいる。
私は、伜が中学生になっても、暑中休暇がくると、釣りの供をさせている。