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さくらじま

桜島・日の果て・幻化

梅崎 春生

梅崎春生『桜島・日の果て・幻化』。同一底本的分册已合并为一书。收入:桜島、日の果て、幻化、風宴。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 169,810 字 · 345 页

青空文庫

ふり返ると町並の向うに、開聞岳の山容が見える。魚の臭いでいっぱいだ。庭内にむしろを敷いて、一面に茶褐色の鰹節を干した家がある。そのそばに猫が丸くなって眠っている。バー。パチンコ屋。食堂。特製チャンポン。空気は湿っていた。

「ここに入ろうよ」

食堂に入る。チャンポンと割焼酎を注文する。焼酎の方が先に来た。

「割焼酎というのはね」

丹尾が五郎の盃に注いだ。盃というより、小ぶりの湯呑みに近い。黒褐色の厚手のやきものだ。

「水で割るんじゃない」

「何で割るのかね?」

「清酒。いや、合成酒でしょう。水で割ると、かえってにおいが鼻につく」

つまみの塩辛を掌に受けて、丹尾は焼酎とともに口に放り込む。盃を傾けながら、五郎はその赤い掌を見ていた。

「君。肝臓が相当いかれているようだね」

「そうですか」

丹尾は平気な顔で答えた。

「そうでしょうな。あれから毎日酒ばかりで、アル中気味だ」

「酒で悲しさが減るかい?」

「いや。やはりだめだね。やけをおこして、いっそのこと死のうかと思うけれど――」

チャンポンが来た。丹尾は箸を割って、先をこすり合わせた。

「さっき飛行機で、油が流れ始めたでしょう。