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さくらじま

桜島・日の果て・幻化

梅崎 春生

梅崎春生『桜島・日の果て・幻化』。同一底本的分册已合并为一书。收入:桜島、日の果て、幻化、風宴。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 169,810 字 · 345 页

青空文庫

思い出しても歯ぎしりしたくなるような不快な思い出は、数限りない。自分が目に見えて卑屈な気持になって行くこと、それがおそろしかった。

(しかしもう死ぬという今になって、それが何であろう)

私は暗い気持で食事を終えた。壕を出、落日の径を降り、暗号室に入って行った。そして当直を交替した。

電報は多くなかった。今日の電報綴りを見ても、銀河一機どこそこを発ったとか、品物を何番号の貨車で送ったとか、あまり重要でない電報ばかりである。当直士官に立っている暗号士がうつらうつら居眠りをしている。電信機の音が四辺に聞える。電信兵の半ばは、予科練の兵隊である。練習機不足のため、通信兵に廻された連中なのだ。私は頬杖をついたまま、目を閉じた。

――先刻、夕焼の小径を降りて来る時、静かな鹿児島湾の上空を、古ぼけた練習機が飛んでいた。風に逆っているせいか、双翼をぶるぶるふるわせながら、極度にのろい速力で、丁度空を這っているように見えた。特攻隊に此の練習機を使用していることを、二三日前私は聞いた。それから目を閉じたいような気持で居りながら、目を外らせなかったのだ。その機に搭乗している若い飛行士のことを想像していた。