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さくらじま

桜島・日の果て・幻化

梅崎 春生

梅崎春生『桜島・日の果て・幻化』。同一底本的分册已合并为一书。收入:桜島、日の果て、幻化、風宴。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 169,810 字 · 345 页

青空文庫

〈そこは私娼だから、病気を恐れろという意味なのか?〉

それならそうとはっきり言えばいい、と五郎は思った。しかしも一度聞き直すのは、彼の自尊心が許さなかった。それから一週間後、一人で酒を飲み、夜更けて戻る時、赤提灯の前を通りかかった。ふと先夜の三田村のもったいぶった言い方を思い出した。一度は通り過ぎたが、ためらいながら元に戻り、油障子を張った引き戸をそっと引きあける。寒い夜で、年老いたのと若いのと二人の妓が、火鉢に当っていた。二人とも会話をやめ、ふしぎそうな顔付きで、制服姿の五郎を見た。五郎は若い方を指して言った。

「そのひと、あいてる?」

「はい」

女は娼婦らしくなく、小学生のように素直な声を出した。五郎は靴を脱いで、二階に上った。ここに勤め始めて二箇月だそうで、女の体はまだ未熟なように思えた。

「何でここに泊ってはいけないのだろう?」

そのわけは翌朝になって判った。七時過ぎに眼がさめ、服を着て窓をあけた。窓の下を人が通っている。五郎ははっとした。通行人のほとんどが学生であり、彼の同窓生であった。

「なるほど。これは困ったな」

五郎は窓をしめ、また細めにあけた。