轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
梅崎春生『桜島・日の果て・幻化』。同一底本的分册已合并为一书。收入:桜島、日の果て、幻化、風宴。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 169,810 字 · 345 页
学期末、五郎はとうとう落第した。実際に点数が足りなかったのか、松井教授が彼を憎んだのか、今もって判らない。もう教授も死んだ筈だし、問いただすすべはないのだ。赤提灯の一件は、三田村にも話さなかった。
少年が歯で抜いたジュースは、なまぬるかった。陽光にさらしていたのか、甘さに日向くささがある。半分ほど飲み、五郎は少年に話しかけた。
「伊作に床屋があるかい?」
「ある」
瓶から口を離して、少年は声を力ませた。
「床屋ぐらいはある!」
「ああ、そうだ」
トラックの荷台の若者との会話を思い出した。伊作の生れだと聞いた。
「近くに温泉があるそうだね」
「うん」
飲み干した瓶を、少年はていねいに松の根にもたせかけた。
「湯之浦温泉」
「近いのか」
「ちっと遠い」
少年は初めて笑いを見せた。
「自動車で行くと直ぐじゃ」
父親の職業を思い出したのだろう。陽を受けて額に汗の玉が出ている。
〈今夜はそこに泊ろうかな〉
五郎は海を見ながら考えた。立ち上ってジュースの残りを砂にぶちまける。
〈床屋に行って、さっぱりして――〉
五郎は流木の方を眺めていた。流木からの足跡がまだ残っている。きちんと並んでいるのでなく、じぐざぐに乱れている。