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さくらじま

桜島・日の果て・幻化

梅崎 春生

梅崎春生『桜島・日の果て・幻化』。同一底本的分册已合并为一书。收入:桜島、日の果て、幻化、風宴。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 169,810 字 · 345 页

青空文庫

「お節介め!」

彼は呟いた。

「踊ろうと踊るまいと、おれの勝手だ。他人から四の五の言われる筋合はない!」

少年が彼に親しみを見せたのは、いっしょに食事をしたせいではない。秘密を共有したという気持から、彼につきまとったのだ。共有。いや、共有でない。

〈おれの秘密を見たことで、あの子供は妙な優越感を持ったのだろう。おれという大人と対等以上の位置に立ったつもりなんだ〉

彼は眼を閉じて、少年の風貌を思い浮べた。肌は浅黒く、眼が大きく、頭の鉢は開いていた。あの大きな眼で、どんな風に彼を眺めていたのだろうか。酔っぱらいと思ったのか、気違いだと判断したのか。とにかくそのおかげで、ハイヤーに乗せられ、あんまに背中を踏んづけられる羽目におちいった。すべてが誤解の上に成立っている。彼がチンドン屋の真似をして踊ったのは、秘密でも何でもない。

「なあ。子供よ」

茶碗の焼酎をぐっとあおり、彼は少年の顔を思い浮べながら呼びかけた。

「おれたちはあの時、判り合っていたんじゃないのか。お前は独りでズクラを獲り、おれは独りで踊っていた。それだけの話じゃなかったのか」

不安は怒りに移りつつあった。