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うめづしえんおうでん

梅津只円翁伝

杉山 萠円

「福岡日日新聞」1934(昭和9)年4月14日~5月31日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,582 字 · 130 页

青空文庫

右つとめ終って後、御目録を頂戴し荒巻軍治氏(翁の令弟)に祝言を仰付られた。

又文久元年九月(利春四十五歳)、宰相公(長知)御昇進御祝につき、表舞台で同二十八日より三日共翁附の御能を仰付られた。

同じく文久元年十月十五日に藩公から翁に御用召があったので、何事かと思って御館へ罷出たところ御月番家老黒田大和殿から御褒美があった。すなわち「利春事、家業の心掛よろしく、別して芸道丈夫である。のみならず平日の心得方よろしく暮し向万事質素で、門弟の引立方等が深切に行届いている段が藩公の御耳に達し、奇特に思召され、御目録の通り下し賜わり、弥々出精せよという有難きお言葉である」という御沙汰であった。且つ、「格別の御詮議を以て御納戸組馬廻格に加入仰付られ候事」というので無上の面目を施して退出した。

右の御褒美の中に「平日の心掛宜敷」「暮し向万事質素」「門弟引立方深切」云々という事実は筆者等が翁の晩年に於ても親しく実見したところで、後に掲ぐる翁の逸話を一読されたならば思い半に過ぐるであろう。

もしそれ翁の「芸道の丈夫」云々の一事に至っては、吾々門下の云為すべき事柄でないかも知れないが、しかし、そうした芸風は翁の晩年に於ても吾々が日常に感銘させられ過ぎる位感銘させられていた事実であった。