轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

うめづしえんおうでん

梅津只円翁伝

杉山 萠円

「福岡日日新聞」1934(昭和9)年4月14日~5月31日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,582 字 · 130 页

青空文庫

御家族の方や私が御気分をお尋ねしても御返事をなさらない事が数日に及んでいる折柄で、面会などは主治医として当然、お断り申上げなければならない場合であったが、しかし又一方から考えてみると、その時は、その面会謝絶すらも無用と思わるる絶望状態で、何を申上げてもお耳に入る筈はない。御臨終の妨げになる心配はないと考えたから、折角の御希望をお止めするのは却って心ない業ではあるまいかと気が付いて……それならば折角のお話ですから私が立会いの上でお尋ね下さい……と御返辞した。

二人の老人は非常に喜ばれた。即刻、私と同伴して、程近い中庄の老先生の枕頭に来られて、出来るだけ大きな声で、私にはチンプンカンプンわからない謡曲の秘伝らしい事を繰返し繰返し質問されたが、私の推察通り意識不明の御容態の事とて、老先生が御返事をなさる筈がない。短い息の下にスヤスヤと眠って居られるばかりである。

二人の老人は暗然として顔を見合わせた。仕方なしに今度は御臨終に近い老先生の枕元で本を開いて、二人の御老人が同吟に謡い出した。

それが何の曲であったか、もとより私の記憶に残っていよう筈もないが、たしか開かれた一枚の真中あたりまで謡って来られたと思ううちに老先生の呼吸が少し静かになって来た。