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もりのいしまつ

森の石松

山中 貞雄

「シナリオ・臨時増刊号」1937(昭和12)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,949 字 · 49 页

青空文庫

屹度なるぞ。誰がこんな汚ねえ家に居るものかッ。俺ァやくざになって、一生を太く短く暮すんだ。父っつあんがいくら……いくら、いくら何んと云ったって……」

「もういい石松、分った分った分ってるよ。分ったから今夜はもう寝ろ」

「分ってる? 分ってるものか? 父っつあんに俺の気持ちなんか分ってるものか」

S=奥の部屋

石松、奥の部屋で泣き声で叫んでいる。

S=店

源兵衛、淋しく土間へ下りると戸を閉める。

(F・O)

S=七五郎家の外(昼)

厩の中で馬に飼料をやりながら七五郎、傍の柵に凭れている石松と話している。

(若しも遠州森町から富士山が見えるものならば、この場面なぞに遠く富士が見えているとよろし)

七五郎、話す。

「あの晩おっ母ァに泣かれて俺弱ったよ。何んと云ったって俺ん処は親一人子一人だ。なんべんも考えて見たが……おっ母ァ一人残してうちを飛び出す事は俺には出来ねえ。後に残ったおっ母ァが可哀想だ。石松、俺ァやくざになるの止めたよ」

「俺ァお前が行かなくとも一人で清水へ行くつもりだ」

「家じゃ許して呉れたのか」

「なーに、家の父っつあんに俺の気持ちなんか判るものか。