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もりのいしまつ

森の石松

山中 貞雄

「シナリオ・臨時増刊号」1937(昭和12)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,949 字 · 49 页

青空文庫

覚えてろ」

S=亀崎の宿の旅籠「大野屋」(夜)

土間が居酒屋になって居る。

片眼繃帯をした石松、一人で片隅で酒を呑む。

久六の児分二人が外からかけて来て、亭主に何か耳打して、一人は外を見張り、一人が二階へかけ上る。

石松、一文銭をもてあそび乍ら見て居る。

〔註―今迄に書き落して居たが、これは石松のくせで、ひまさえ有れば一文銭を廻したりして居る事〕

酌婦が来て石松に、

「表か裏か当てっこしましょうか」

「よし、俺ァ表だ」

「じゃ、妾は裏ね」

石松、銭を廻す。

表と出た。

「あらッ」

「どうだ、表だろう。俺の勝だ」

「も一度」

「よし今度も俺は表だ」

「妾は裏」

石松、銭を廻す。

保下田の久六、児分にまもられて二階から下りて来る(片手を首から釣って居る)。

石松、突然おそい掛って只一太刀。

叫声。

久六、倒れる。人々、呆然と佇む。物も言えない。廻って居た一文銭止る。

石松、女に訊ねる。

「どうだ姐さん、裏か? 表か? 表だろう?」

女、おどろいて物が言えずうなづく。

石松、ほほえんで、

「どうでえ姐さん、又俺の勝だ」(F・O)

S=街道

旅姿の森の石松の移動。