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もりのいしまつ

森の石松

山中 貞雄

「シナリオ・臨時増刊号」1937(昭和12)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,949 字 · 49 页

青空文庫

「まア呆れた。兄さんったらそんな事ちっとも言って寄こさないのね」

「親の儂に一言の挨拶もしねえで、何処の馬の骨か分らねえ様な女と一緒になりやがって………」

「兄さん帰って来たら、うんと叱言を言ってやるといいわ」

「おや?」

「どうしたの」

「ほ――」

「どうしたのよ?」

「子供が生れるんだって」

「まァ赤ちゃんが」

二人、笑い出す。

野良帰りの七五郎、入って来る。

「爺っつあん、何を笑ってるんだい」

「今日は」

「静坊、一杯呉れ、冷でいいよ」

「はい」

お静、酒を出し乍ら、

「七五郎さん、兄さんったらね、知らないうちにお嫁さん貰ってるのよ」

「石松が……?」

「それで今度、赤ちゃんが出来るんですって」

「なーンだ。それでか、爺っつあんいやにニコニコして居ると思ったよ」

源兵衛爺さん嬉しそうに、

「なアお静、儂清水へ行って来ようと思うんだが……」

「清水へ行くって、兄さんの処、分ってるの」

「なーに、次郎長親分を訪ねて行きァ分るサ」

「でも、兄さんが帰ってから一緒に行けばいいじゃないの?」

七五郎が、

「石松、帰って来るのか」

「兄さんのお嫁さんから此処へ手紙が来たの。