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もりのいしまつ
森の石松
山中 貞雄
「シナリオ・臨時増刊号」1937(昭和12)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,949 字 · 49 页
だからきっと帰って来るわ」
「そうか、帰って来るのか。あい度えなァ、さぞ立派なお貸元になってる事だろう」
(O・L)
S=七五郎の住居の表
それは曾つての日、石松が故郷を出る時、七五郎と語ったあの場所です。
黄昏。七五郎、一人居る。
「あの時、おッ母ァさえ居なけれァ、俺ァ石松と一緒に清水へ行ったんだ。おッ母ァがもう一年早く死んでれァ、俺ァ次郎長親分の身内になれたんだな?」
その時、七五郎の女房、お民の声がする。
「貴ン方、御飯よ……」
「あ、今行くよ」
七五郎、不気嫌に家へ入る。
S=内部(夜)
御膳。
七五郎、茶碗を置く。
お民、
「どうしたの?」
「いや、喰い度くねえンだ」
「何処か悪いんじゃない」
「……」
「でも一杯ぐらい、食べて置かないとお前さん」
「喰い度くねえったら」
お民、茶碗を置く。
「どうしたのよォ?」
「……」
「ね、本当にどこか悪いんじゃない?」
七五郎、
「――手や爪を綺麗にして毎晩酒の一本も呑める身分になってみてえ……」
お民、
「お酒だったの。そうならそうと早く云って呉れればいいのに……まだ少し残ってるのよ」
「お民」
「えッ」