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かんおけのはなよめ

棺桶の花嫁

海野 十三

「ぷろふいる」1937(昭和12)年1~3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 42,845 字 · 86 页

青空文庫

四五人の男女がその上にのぼって、メリメリと屋根をこわしている。――「このなかに、家族が三人生埋めになっています。どうか皆さんお手を貸して下さい。浜の家」

三人が生き埋めに?

杜は、これは手を貸してやらずばなるまいと思った。四、五人の力では、この潰れた大きな屋根が、どうなるものか。

と、突然向うの通りに、叫喚が起った。人が暴れだしたのかと思ってよく見ると、これは警官だった。

「オイ火事だ。これは、大きくなる。オイ皆、手を貸してくれッ」

どこでも手を貸せであった。見ると火の手らしい黄色い煙が、横丁の方から、静かに流れてきた。

「オイ火事はこっちだッ」

「いや、向うだよ」

「いけねえ、あっちからもこっちからも、火事を出しやがった」

「おう、たいへんだ。早く家の下敷になった人間を引張りださないと、焼け死んでしまうぜ」

誰も彼もが、土色の顔をして、右往左往していた。悲鳴と叫喚とが、ひっきりなしに聞えてきた。大きな荷物を担いで走る者がある。頭部に白い繃帯をまいた男を、細君らしいのが背負って駈けだしてゆく。

杜ははじめて事態の極めて重大なることを察した。これは恐ろしいことになった。