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かんおけのはなよめ

棺桶の花嫁

海野 十三

「ぷろふいる」1937(昭和12)年1~3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 42,845 字 · 86 页

青空文庫

横浜がこんな騒ぎでは、東京とても相当やられているであろう。彼はそこで始めてミチミの身の上を思いだした。

「おおミチミはどうしたろう。この思いがけない地震にあって、きっと泣き叫んでいることだろう」

そうだ、これは、一刻も早く、東京へ帰らなければならない。彼は鉄条網のような電線の上を躍り越えながら、真青になって駅の方へ駈けだした。

4

杜がお千に行き会ったのは、同じ九月一日の午後四時ころだった。場所は横浜市の北を占める高島町の或る露地、そこに提灯屋の一棟がもろに倒壊していて、その梁の下にお千はヒイヒイ泣き叫んでいた。

なぜ彼はそんな時刻にそんなところを通りかかったのか。なんとかして電車や汽車にのって、早く東京へ帰りたいと思った彼は、桜木町の駅に永い間待っていたのだ。しかし遂にいつまで待っても電車は来ないことが分った。また汽車の方もレールの修理がその日のうちにはとても間に合わぬと分って、どっちも駄目になってしまった。

彼は二時間あまりも改札口で待ち呆けをくわされたであろう。駄目と分って、彼は大憤慨の態でそこを出たが、なにぶんにも天災地変のことであり、人力ではどうすることもできなかった。