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かんおけのはなよめ
棺桶の花嫁
海野 十三
「ぷろふいる」1937(昭和12)年1~3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 42,845 字 · 86 页
それから杜は、ミチミと房子との二重の名のついた「尋ね人」の旆を担いで、避難民の固まっているバラックをそれからそれへと訪ねていった。お千は、まだ癒りきらぬ左の腕に繃帯を巻いたまま、どこまでも杜の後につき随って行った。
そうして九月一日から数えて、十二日というものを、無駄に過ごした。杜の心は、だんだん暗くなっていった。それと反対に、お千の気持はだんだん落ちつきを取りかえし、日増しに元気になって、古女房のように杜の身のまわりを世話した。
それは丁度九月十三日のことであった。
杜はいつものように、お千をともなって、朝早くバラックを出た。その日はカラリと晴れた上天気で、陽はカンカンと焼金くさい復興市街の上を照らしていた。杜は途中にして、ミチミの名を書いた旆を、宿に置き忘れてきたことに気がついた。しかしいまさら引返すほどのこともないと思った。でもそのときは、まさかそれが、泣いても泣ききれぬ深刻なる皮肉で彼を迎えようとは、神ならぬ身の気づくよしもなかった。
その日、図らずも彼は、もう死んだものとばかり思っていたミチミに、バッタリ行き逢ったのである。
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