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かんおけのはなよめ

棺桶の花嫁

海野 十三

「ぷろふいる」1937(昭和12)年1~3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 42,845 字 · 86 页

青空文庫

といって、太い両足を子供かなにかのようにバタバタさせるのであった。

「危い危い。冗談じゃない。そんな無茶を云うんだったら、僕はそこで手を離して、君だけ河ンなかへ落としちまう――」

「いやよいやよ。お前さんが離しても、あたしは死んだってお前さんの首を離しやしないわ、どうしてお前さんはそう邪怪なんでしょうネ。いいわ、あたしゃ、ここで死んじゃうわよ、もちろんお前さんを道づれにして――」

「こーれ、危いというのに。第一、みっともない――」

といったが、お千はもうすっかり興奮してしまって、そこが人通の多いところであることも、白昼であることにも、もう弁えがないように見えた。杜の頸を巻いている彼女の腕がいきなりグッと締るかと思うと、最前から彼の耳朶に押しあてられていた熱い唇が横に移動して彼の頬の方から、はては彼の唇の方へ廻ってくる気勢を示した。杜は近よってくるお千の生ぐさい唇の臭を嗅いだ。あわてて顔を横に向けようとしたが彼の頸動脈は、お千のためにあまりにも強く締めつけられていた。そのためになんだか頭がボーッとしてきた。

「あぶないッ――これ止せッ」

「これ、生命を粗末にするなッ」