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かんおけのはなよめ

棺桶の花嫁

海野 十三

「ぷろふいる」1937(昭和12)年1~3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 42,845 字 · 86 页

青空文庫

――さあ起きなさいよォ」

お千はすっかり機嫌を直していた。

配給品が時の氏神であった。二人はそれを並べて幾度も手にとりあげては、顔を見合わせて笑った。

「昨日のことは――あのことは、あんた忘れてネ。あたし、どうかしていたのよ。いくらでも謝るわ」

お千はいい潮時を外さず、愧ずかしそうに素直に謝った。

「うん、なァに、なんでもないさ。――」

杜はいままでに一度も懸けたことのない優しい言葉を云った。その優しい言葉は、お千に対してよりも、自分自身の侘しい心を打った。彼はなんだか熱いものが眼の奥から湧いてくるのを、グッと嚥みこんだ。

8

昨日に続いて、杜とお千とは、また連れだって拾い物に出かけた。

ちょっとした煮物の出来る竈も出来たし、ミカン函を改造して机兼チャブ台も作った。裏手には、お千のために、往来からは見えないように眼かくしをした軽便厠をこしらえた。入口には、杜の名をボール函の真に書いて表札のつもりで貼り出した。名前の横には、彼の勤め先である商会の名も入れて置くことを忘れなかった。

こうして、どうやら恰好のついた一家が出来上った。拾い集めて来た材料は、むしろ余ったくらいであった。