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かんおけのはなよめ
棺桶の花嫁
海野 十三
「ぷろふいる」1937(昭和12)年1~3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 42,845 字 · 86 页
いや、それは発見はしたのであろうがつい気がつかなかったのであろう。それは見慣れない莨の吸い殻だった。――その莨は「敷島!」
杜は「ゴールデンバット」ばかり吸っていた。敷島は絶対に吸わなかった。お千も吸わない。
「敷島」の吸殻は三つほどあった。取りあげてみるとそこへ捨てて間もないように見えるものだった。
もう一つの「敷島」の吸殻を発見した。それは土間の中に堅く埋まっていた。土間の上はなにかを引摺ったように縦の方向に何本もの条溝がついていた。いま発見した吸殻はその下に埋まっていたのである。
土間の上の何本もの条溝は何のためについたのであろう。今朝がたは、こんなものを見なかったことは確かだ。
杜はこの条溝の伸びている方向に目をやった。その条溝は裏口の幕の下に続いて、まだそこから外に伸びているようであった。杜はそれをボンヤリ見つめていたが、そのうち起き上って土間に下り、裏口の幕を掻き分けて何気なく外を見た。
そのとき彼は、実に不思議な光景を見た。
裏口の正面に、焼けて坊主になり、幹だけ残った大樹があった。そこに人間が青い脚をブランとして垂れて下っているのであった。