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かんおけのはなよめ

棺桶の花嫁

海野 十三

「ぷろふいる」1937(昭和12)年1~3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 42,845 字 · 86 页

青空文庫

綱を握っていると、なんとなく変な気持になってきた。この暗黒の焼野原の真ン中で、自分はいま何をしようとしているのだろう。なんだか非常に恐ろしいことを手伝っているような気持がして、彼は思わずブルブルと身慄いした。

途端に綱を握っている手に、ピーンと手応えがあった。ミチミがバラックの中で綱を引いて合図をしたのであった。

「ウン、今だナ――」

彼は綱をグッと握りしめると、後を向いてトットと駆けだした。大地に躓いて倒れるかもしれないと思ったほど、渾身の力を籠めてウウンと引張った。

ドーンと鈍いそして力づよい手応えが両腕を痺れさせた。とうとう沢庵石が井戸から上ってきたのであろうか。彼は綱端を両手に掴み、身体を弓のように反らせて、バラックの中に潜む大きな力に対抗していた。でもなんという奇妙な手応えだろう。どうも沢庵石を引張りあげたにしては、いやに反動がありすぎた。なんだか沢庵石が生き物に化けて綱の端でピンピン跳ねまわっているようであった。

ミチミが杜の方に駆けだしてきたのは、それから十分ほど経った後のことだった。

「もう大丈夫よ。その綱の端を、貴郎の前にある切株に結んで頂戴な」