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しいのき
椎の木
豊島 与志雄
「経済往来」1934(昭和9)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,870 字 · 52 页
殊に、男女のものがまじってるのに、その顔付だけを見ていると、男と女との区別がつかないほど、全体の統一調和がとれていた。
「先ず、最初のは……あれです。」
震えをおびた指先で茂樹がさしたのは、机の上方の壁にかけてある写真だった。紋服をつけた女の半身で……よく見ると、それは、幾年か前の彼の母親の姿なのである。それから畳の上に眼を転ずると、母親に似たものから、順次にちがったものへとなってゆく……。額がさみしく、頬のあたりに弱々しい神経的なものが漂い、鼻が目立たず、※(「臣+頁」、第4水準2-92-25)が温和な円みをもっているもの。それから次第に、頭がある重みをもち、鼻が目立ち、※(「臣+頁」、第4水準2-92-25)が尖ってくる。そして更に、額がつまり、鼻が頑丈になり、頬がふくれ、※(「臣+頁」、第4水準2-92-25)が短くなる……。それは美の標準によるのではなくて、何か特別な順序にちがいない。そして最後の……彼が最も嫌いだといってるその一つは、最初のを母親として、いったい誰なのであろう。良一はそっと茂樹の顔をうかがった。その顔は、全体の中程にでもあったろうか……。