轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しいのき

椎の木

豊島 与志雄

「経済往来」1934(昭和9)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,870 字 · 52 页

青空文庫

二人の顔を見て、頓狂な眼付をした。

「ほう、これは珍らしい。君たちは知り合いなのかい。いつのまに懇意になったんだい。俺にないしょでくっついちゃいかんぞ。」

良一は少々当が外れた気持だった。竹山の言葉によって何か変事を予想させられていたのだが、川村さんは一人でのんきに酒をのんでるのだった。一昨日まで高熱でねていた川村さんが、髯をそってさっぱりした顔付になって、元気そうに若々しくなってる。それだけの変事にすぎなかった。

ところが、竹山と川村さんの対話が、まるで謎みたいなものとなっていった。女中が出て行くと、竹山は拳をにぎりしめて口を開いた。

「もう帰りましたか。」

「誰が……連れの人か。」

「ええ。」

「さっき帰ったよ。この通り僕一人。」

「ほんとうですね。」

念をおしておいて、竹山は室の中を見廻した。

「スパイだったんですか。」

「いいや、ちがうよ。」

「ハラゴンですか。」

「いいや。君の知らない人だよ。」

「それじゃあ、大丈夫ですね。」

「心配することはないよ。」

「研究も、椎の木も、無事ですね。」

「無事だとも。安心し給え。僕が請合ってるから大丈夫だ。」

竹山は安堵したように息をついて、にっこり笑った。