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しいのき

椎の木

豊島 与志雄

「赤とんぼ」実業之日本社、1946(昭和21)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,002 字 · 13 页

青空文庫

そしてしばらく、椋鳥はけわしい息をつきました。

声や音がしました。一郎と二郎が、あちらから走ってきます。三毛猫もいっしょにかけてきます。

椋鳥は立ちなおりました。生命のあやういことがかえって気をおちつかせました。翼をおさめ、片足を静にもちあげました。足は凧紐からぬけました。ほかの片足をもちあげると、それもするりとぬけました。

一郎と二郎と猫は、すぐ近くまでせまってきました。

椋鳥は横手ななめに眼をすえて、ぱっと飛びたちました。飛びあがってしまえば、羽ばたきに力がこもって、ぐんぐん速くなりました。

がけの外にいで、大きく半円をえがいて、若葉のでだしてる椎の木にとまりました。

破れてる凧の上に、三毛猫はとびつきました。

「ミミー、ミミー、おどきよ。」と一郎は叫びました。

二郎は凧をとりあげました。あちこち破れ、ことに、赤いひげだるまがひどく破れてるのを、じっと、眺めて、泣きだしそうな顔をしました。

一郎は凧の破れ目をしらべました。

「あの椋鳥が破いたんだ。ほかのとけんかして、凧にひっかかったのかもしれないよ。」

そのあたりに、椋鳥の小さな羽毛が落ち散っていました。