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やしがに

椰子蟹

宮原 晃一郎

「赤い鳥」1924(大正13)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,116 字 · 9 页

青空文庫

」と、蟹はブツブツ泡を立てました。

三

蟹は今度はその隣りにある別の樹に登りました。けれどもやはりよい実がありません。どうしたものだろうと、なお探しているうち、ふと下の方で人の声がします。見れば半分裸のこの島の土人が四五人と、何か長い竿の先に丸い網をつけて、胴乱をさげた洋服姿の人が二人立って、木の上を見上げては指して話しておりました。

「たしか、この木にいるに相違ありません。」と、一人の土人が申しました。

「そうかね。」と、長い柄の網をもった人がきらりと眼鏡を光らせて、蟹の登っている枝のあたりを見上げました。

「成程、あの葉のかげに妙なものが見えるようだね。」

すると、もう一人の洋服を着た人が申しました。

「じゃ誰か木に登って、つかまえて貰おうか。」

土人の一人は手でもって椰子の幹を抱き、足でもってそれを突張りながら、そろそろと登ってまいりました。

樹の上で椰子蟹は、始めて自分をつかまえに来たものだとさとりました。一体これまで椰子蟹は誰からもつかまえられようとしたことはありませんでした。ただ土人の子供が時に追いかけるぐらいのことでしたから、今の今まで自分をおさえに来るのだとは思わず、安閑としていたのですが、登ってくる土人は、だんだんと近づいて来ますから、それにつれて自分もだんだん、上へ上へとのぼっ