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たてごし
楯輿
山本 周五郎
「日本士道記」晴南社創立事務所、1944(昭和19)年12月
N1 · 挑战 · 新字新假名 · 8,377 字 · 17 页
この日のおもな戦は敵前渡河と竹ヶ鼻の砦の攻略にあったが、左衛門大夫は池田輝政に先を越されてはかばかしい合戦に恵まれず、明くる二十三日の岐阜城攻めに当って、はじめて大手の攻め口をとることができたのである。……今日こそは、福島勢のすべてがそう決意し、午前六時を期して商町口から城の大手へと殺到した。神原与八郎は部下の槍組三十人と共に陣頭にいた。火を放たれて燃えさかる街筋のかなたに、殿前と呼ぶ敵の木戸が見える。獲物を狙う猛禽のように、その木戸ひとつをねめつけていたかれは、突撃の命がくだるのを待ちかねて突っ込んだ。……両側の家を焼く煙が道いっぱいに渦を巻き、が睫を焦がすかと思えた。およそ三十間あまり、その火気と煙をついて疾走した与八郎は、とつぜん横腹を棒かなにかでぐわんと殴られたように感じ、足をとられて前のめりに転倒した。すぐはじかれたように顔をあげ、立ち止ろうとする部下に「突っ込め」と叫んで身を起した、すると左の脇腹に肉をもぎとられたような不安定な痛みがあるのに気づき、はじめて鉄砲に射たれたことを知った。具足の胴にぽかっと二寸ほどの穴があいている。――しまった、そう呟いて一瞬くらくらと眼が昏みそうになったが、その短い刹那に「死にざま」