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がっきのせいめい

楽器の生命

小川 未明

「随筆」1924(大正13)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,679 字 · 8 页

青空文庫

そして、その人の手で造られた、オルガンは、ひじょうな高価のものでありました。

お嬢さんは、病気のため海岸へ保養にいっていました。そして、そこで、この広告を見たのであります。

それでなくてさえ気が沈んで、さびしいのを、毎日、波の音を聞き、風の並木にあたる音を聞くと、いっそう気持ちが滅入るのでした。それは、けっして、病気にとっていいことでありませんでした。

お嬢さんは、音楽が好きでしたから、こんなときに、バイオリンか、琴が弾いてみたいと思いましたが、医者は、かえって、神経を興奮させてよくないだろうといって、許さなかったのです。その医者は、音楽と神経の関係をば、かなり深く心得ていたからでありましょう。

「ここに、こういう心を愉快にする、オルガンがありますよ。」と、お嬢さんは、雑誌の広告を、まだそう年寄りでない医者に見せました。

医者は、黙って、しばらくそれを見ていましたが、驚いたというふうで、

「お嬢さん、もしこれがほんとうなら、音楽界の革命です。」といいました。

お嬢さんの顔は、青白くて、目は、澄んでいました。その目で、じっとこちらを見て、

「そうした革命はあり得ることです。