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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
03 第三部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,781 字 · 235 页
こういうのが、ほんとうの意味で公共に仕える道ではないか。――
次郎も、話がそこまで進むと、「白鳥芦花に入る」が、何だかぼんやりわかって来たような気がした。
「それにくらべると――」
と、先生は、ちらと大沢を見た眼を次郎の方に転じながら、
「大沢のやりかたには、やはり足りないところがある。むろん、自分を売るといったような不純な気持が大沢に少しでもあったとは私は思わない。大沢も、もうそこいらはとうに突きぬけているよ。しかし、とにかく大沢という人間が、けばけばしく出過ぎて、古い型の英雄になってしまった事はたしかだ。いわば、真黒な鳥が白い芦の花の中に飛込んだようなものだね。」
みんなが思わず笑い出した。大沢は、顔をまっかにしながら、
「わあっ、今日は、僕、台なしだな、次郎君も、もう僕を弁護するのはよしてくれよ。」
それで、また、一しきり笑い声が賑やかだった。その笑い声がしずまるのを待って、先生は次郎に言った。
「どうだ、もうたいてい意味だけはわかったろう。真白な鳥が、真白な芦原の中に舞いこむ、すると、その姿は見えなくなる。しかし、その羽風のために、今まで眠っていた芦原が一面にそよぎ出す、というのだ。