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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
03 第三部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,781 字 · 235 页
「次郎、お前はほんとうに心からそう思っているのか。」
次郎は、そう念を押されて、ちょっとたじろいだふうだったが、少し眼を伏せて、
「僕、あやまらなきゃならないと思っているんです。春月亭も悪いんですが、僕のやったことも悪いんです。あんなこと卑怯です。卑怯なことをして知らん顔をするのは、なお卑怯です。」
「うむ、その通りだ。お前もそこまで考えるようになれば、もう日除もいらんよ。じゃあ行って来るか。」
「ええ、行って来ます。」
次郎は、父の本心がわかったうえに、ほめてまでもらったので、初陣にでも臨むような、わくわくする気持で立ち上りかけた。俊亮は、しかし、彼を手で制しながら、
「まあ、まて。そう急いで行かなくてもいい。さっき仙吉をやって、あの酒はそのまま使わないで置いてもらうように頼んであるんだから。実は、あすの朝、向こうの忙しくない時に、私が行ってあやまるつもりでいたんだ。」
「僕は、父さんにあやまって貰いたくないんです。」
「どうして?」
「悪かったのは僕です。それに、父さんが、あんな女に――」
次郎はうつむいて言葉をとぎらした。俊亮も、むろん、すぐ次郎の気持を察して、ちょっとしんみりしたが、わざと、とぼけたように、