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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

03 第三部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,781 字 · 235 页

青空文庫

」と、ほんとうに可笑しそうに笑った。

父が帰ったのは、夜十時過ぎだった。父は、帰るとすぐ、祖母に、「話はあすにしましょう。」と言って、ねてしまった。

八月二十六日

朝食後、父は、

「お母さんさえおいやでなければ、やはり養鶏の方にきめようかと思いますが、……」

と切り出した。祖母は、

「あたし一人で反対してもなりますまいしね。」

と、変に皮肉な返事をしたが、心から反対しているようには見えなかった。しかし、すぐそのあとで、

「やっぱり住居は大巻さんの方かえ。」

と、それがあくまで不服らしかった。父は、

「実はそのことで、昨日は篤と大巻にも相談したんですが、ちょうど工合よく川っぷちに空家がありましたので、そこを借りたらということになりました。古い百姓家ですが、相当広いうちです。」

すると母が、

「あっ、そうそう。あの家がまだあいていましたわね。ちょうどあの裏に父の地所が少しばかりありますから、じゃあ、養鶏場もそこにしたらいいと思いますわ。」

と、めずらしくはしゃいだ口をきいた。

そのあと、相談はなめらかに進み、さっそく引越しの準備にとりかかることになった。僕は、急に気持が軽くなった。