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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

03 第三部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,781 字 · 235 页

青空文庫

家はずいぶん広いらしく、近くに人のけはいがほとんどしなかったが、掃除をどうなりすました頃、三十四五歳ぐらいの女の人が十能に炭火をいれて運んで来た。

「おやおや、お掃除までしてもらいましたかな。ゆうべは、よう寝られませんでしたろ。」

と、彼女はきちんと坐りこんで、三人のあいさつをうけ、それから、まじまじと次郎を見ていたが、

「お母さんが、心配していなさりませんかな。早う帰って安心させてお上げ。」

次郎はただ顔を赧らめただけだった。

朝飯は、茶の間で家の人たちといっしょによばれた。広い土間の隅の井戸端で洗面を終ると、そのまま食卓に案内されたが、ゆうべにひきかえて、そこにはもうたくさんの顔がならんでいた。

「さあ、さあ。」

と、七十ぐらいの、品のいい、小作りなお婆さんがまず三人に声をかけた。お婆さんと同じちゃぶ台には、三人の男の子がならんでいて、めずらしそうに次郎たちを見た。昨夜の老人の顔はそこには見えなかった。

次郎たちのためには。べつのちゃぶ台が用意されていた。大沢がお婆さんにあいさつをしてそのそばに坐ると、恭一と次郎とがつぎつぎにその通りをまねた。さっきの女の人がちゃぶ台にのせてある飯櫃と汁鍋の蓋をとって、