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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
03 第三部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,781 字 · 235 页
」
「そりゃあ、お祖母さん相手の喧嘩なんか、しない方がいいさ。しかし、兄弟喧嘩ぐらいは、たまにはいいよ。ことに、室崎をやっつけた時のような喧嘩なら、大いにやるがいいと思うね。」
「ふうむ。……しかしあんな喧嘩なら、今でも機会があればやるだろう。」
「どうだかね、今の様子じゃあ。……僕が一つ相手になって試してみるかね。」
「試すって、どうするんだい。」
「思いきり無茶な事を言って、怒らしてみるんだ。」
「君が何を言ったって、それを本気にはしないよ。」
「本気にするまでやってみるさ。」
「しかし、そんなにしてまで喧嘩をさせる必要があるかね。」
「あるよ。僕は、あると思うね。今のままじゃあ、妙に考えが固まってしまって、どんな不正に対しても怒らなくなるかも知れんよ。」
大沢は頗るまじめだった。そして、次郎を怒らす機会の来るのを、本気でねらっているらしかった。しかし、その機会が来るまえに、思いがけない事件が次郎を待伏せていて、大沢の苦心を無用にしてしまったのである。
*
次郎たちの数学の受持に、宝鏡方俊というむずかしい名前の先生がいた。七尺に近いと思われる堂々たる体躯の持主で、顔の作りもそれに応じていかにも壮大な感じを与えたが、気は人一倍小さい方だった。