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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

03 第三部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,781 字 · 235 页

青空文庫

宝鏡先生とでも誰とでも競争せよ、という意味なんだ。どうだい、大ていわかったろう。」

朝倉先生は、そう言って、だしぬけに椅子から立上り、

「じゃあ、もういいから、帰ってゆっくり考えてみるんだ。」

と、さっさと生徒監室の方に歩き出した。次郎は、あわててそのうしろ姿に敬礼したが、まだじっと自分の様子を見つめている小田先生の眼に出会すと、彼はわざとのようにたずねた。

「もういいんですか。」

「朝倉先生がいいと言われたら、いいだろう。」

小田先生の答は、どぎまぎしているようでもあり、くさっているようでもあった。次郎はそれをきくとすぐ、きちんと敬礼をして室を出たが、廊下を歩いて行く彼の胸の中には、勝ち誇った気持と、重い荷を負わされた気持とが交錯していた。

彼の姿を見つけた組の生徒たちが、すぐ彼を取りまいて、くちぐちにいろいろのことをたずねた。しかし、真実のこもった声と、そうでない声とを聞きわけるに敏感な彼は、「大丈夫さ」と答えるだけで、何もくわしいことを言わなかった。ただ、新賀に対してだけは、あとで自分から近づいて行って、あらましの成行を話し、

「僕、どうしていいかわからなくなっちゃったよ。