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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
03 第三部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,781 字 · 235 页
六 迷宮
」
と、いかにも思いあぐんだように言った。
午後の授業には、ほとんど身が入らなかった。いっそ今日のうちに眼をつぶって宝鏡先生にあやまってしまうか、とも考えてみたが、それには先ず、小田先生に対する気持からして清算してかからなければならなかった。それに、「心にもないことはやるな」と朝倉先生に言われたことが、戒めとしてというよりは、むしろ気休めとして彼の心に仂いていた。彼は、とうとう授業が終るまでに決心しかねて、帰り支度をしていた。すると新賀が彼の肩をたたいて言った。
「今日、帰りに君のうちに寄ってもいいかい。」
次郎は喜んで彼といっしょに校門を出た。
六 迷宮
次郎は、歩きながら、二人の先生との対談の様子を、あらためてくわしく新賀に話した。話しているうちに、小田先生のあいまいな態度に対する不満の言葉も、自然、幾度となく彼の唇を洩れた。しかし、今は、そうした不満をならべるのが彼の目的ではなかった。彼には、もう、どの先生に対しても、朝倉先生の心に背いてまで反抗的な態度に出る気持は残っていなかった。宝鏡先生に対してこれからどうすればいいか、ということについても、いつの間にか決心がつきかけていたのである。