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うたまろざんげ

歌麿懺悔

邦枝 完二

江戸名人伝

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,396 字 · 23 页

青空文庫

一

「うッふふ。――で、おめえ、どうしなすった。まさか、うしろを見せたんじゃなかろうの」

「ところが師匠、笑わねえでおくんなせえ。忠臣蔵の師直じゃねえが、あっしゃア急に命が惜しくなって、はばかりへ行くふりをしながら、褌もしずに逃げ出して来ちまったんで。……」

「何んだって。逃げて来たと。――」

「へえ、面目ねえが、あの体で責められたんじゃ命が保たねえような気がしやして。……」

「いい若え者が何て意気地のねえ話なんだ。どんな体で責められたか知らねえが、相手はたかが女じゃねえか。女に負けてのめのめ逃げ出して来るなんざ、当時彫師の名折ンなるぜ」

「ところが師匠、お前さんは相手を見ねえからそんな豪勢な口をききなさるが、さっきもいった通り、女はちょうど師匠が前に描きなすった、あの北国五色墨ン中の、てっぽうそっくりの体なんで。……」

「結構じゃねえか。てっぽうなんてものは、こっちから探しに行ったって、そうざらにあるもんじゃねえ。憂曇華の、めぐりあったが百年目、たとえ腰ッ骨が折れたからって、あとへ引くわけのもんじゃねえや。――この節の若え者は、なんて意気地がねえんだろうの」