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しょうじくんのとけい

正二くんの時計

小川 未明

「台湾日日新報 夕刊」昭和15年2月8日、9日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,814 字 · 6 页

青空文庫

「兄さん、いつ時計を買うの。」

「まだわからない。」

「買ったら、兄さんの時計を僕におくれよ。」といいました。

「ああ、やるけれど、一年先だか、二年先だかわからないぞ。」

「えっ、一年も、二年も……。」

正二くんは、目を大きくみはったのです。

「うちに、お父さんの前に持っていた、大きな時計があったろう。あれをもらうさ。」と、兄さんがいいました。

それは、大型の、ひもで下げる昔ふうのものでした。商店か、古道具屋の店頭でもなければ、見られぬものです。

「やだ、あんな昔のものなんか。」と、さすがに正二くんも、おかしくなって、笑いました。

「ばか、あれは、機械がいいのだ。この時計なんかとくらべものにならぬほど正確なんだ。」と、兄さんは、自分の時計をながめました。

「じゃ、兄さん、あれをおもらいよ。」

「あんなの下げて歩けるか。」

これを聞くと、正二くんは、お父さんのもとへ飛んでいきました。

「お父さん、僕に、大きな時計をおくれよ。」

「あれは、おまえなどの持つ時計ではない。中学へ上がるとき、いい腕時計を買ってやるから。」

「僕、待ちきれないんだよ、だから、あの大きいのをくれてもいいでしょう。