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せいぎ
正義
浜尾 四郎
「新青年」博文館、1930(昭和5)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,327 字 · 43 页
物ずきな記者たちはEホテルに行くかも知れません。いや行くにちがいない。そうすればそこではAが当夜泊った事と同時に、立派な家庭の夫人が同時に居たことが証明されます。衣川さん。そのホテルのオフィスに、勿論偽名ですが二人がサインしているのです。夫人の筆跡がちゃんと明かになって居るのです。Aは逃れることは出来ません」
「ではその夫人だけに出てもらうわけには……」
「絶対に不可能です。あの時分そんな処にいるべき女でないのです。のみならず、夫人自身が実見して居ないのですから仕方がありません」
「それではもはや妥協の余地はないのだね」
「ただ僕自身があなたの前で云っただけの事なら法廷に出て行ってもいいのですが」
「然しそれは、全然作り話だと思われればそれ切りの話だ。……よし、仕方がない。斯うなった以上、僕は僕の信ずる通り行動するより外仕方がない」
「というとどうするのですか」
「われわれ法律家に、Let justice be done though heaven fall. という格言がある。正義を遂行せしめよ。清川、僕は正しいことのために争うのだ。君一個人に対しては、恩を仇で返すことになるかも知れない。