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しとかげ
死と影
「文学界 第二巻第九号」1948(昭和23)年9月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,160 字 · 11 页
私は下宿へ女を一歩も寄せつけなかったが、時々女の店へ泊った。店の二階は一間しかない。女も女給たちも、五六人がそこへゴチャゴチャ入りみだれて眠る。私の泊る部屋も、そこしかなかった。私は平然と、女とたわむれる。女給たちは、ねたフリをしている。白々と明ける部屋に、ふと目がさめると、女給たちの大きな尻があらわに入りみだれている。あの女給たちは、ズロースをぬいで、ねむるのである。彼女らは、あの男、この男と、代りばんこに泊り歩いて、店へ戻ると、ダタイの妙薬と称する液汁をのみ、ゲーゲー吐いているのであった。
金のある時は、いつも、よそで遊んでいた。その遊び先で、二人の珍妙な友人ができて、彼らは時々私の下宿へ遊びにきた。
一人は通称「三平」とよぶ銀座の似顔絵描きであった。三平はアルコール中毒で、酒がきれると、ぶる/\ふるえ、いそいでコップ酒をひッかけてくる。時々私と腰をすえて飲みだすと、さのみ私の酔わぬうちに泥酔して、アヤツリ人形が踊るような、両手を盲が歩くように前へつきのばし、ピョン/\と跳ねるような不思議な千鳥足となり、あげくに吐いて、つぶれてしまう。殆んど食事をとらず、アルコールで生きているようなもので、そのくせ一時に大量は無理のようで、衰弱しきっていたのである。