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しのよこく

死の予告

野村 胡堂

「文芸倶楽部」1929(昭和4)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,149 字 · 34 页

青空文庫

足が達者だから、そう、短距離なの、中距離なの、レコードは? なに、ランニングの選手じゃないの、新聞の種取り? まア――」

言うだけ言って瑛子はサッサと出て行きます。

「この方は鏡照子さん、当家の家政婦で御座います。お生れは北海道、お年は――あッ、それを申しては失礼だとか言いましたな」

僅に顔を挙げたのは、まだ若い割にくすんだ洋装をした婦人――いや娘と言った方がいいかも知れません――兎に角、無口な、上品な、夕顔のように淋しいところのある女性です。

これも、「足の勇」の不遠慮な視線に射すくめられて、脅えた小鳥のように逃帰ってしまいました。

「あれは可愛相な娘です。両親を失って路頭に迷って居るのを、紹介する人があって引取りましたが、あの通り真面目で忠実ですから、唯今では家政全部を任されて、取りさばいて居ります」

長谷部老人は自分の娘のような自慢口調で、こんな事を申します。

「次は」

「園丁の定公夫婦、お庭の中に一軒建てて住んで居ります」

四十前後の植木屋夫婦、別に取立てて言うほどのことはありません。

続いて、書生二人、女中五人、運転手、助手、その中には変った人間も居りますが、これとても言うほどのことはありません。