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しのよこく

死の予告

野村 胡堂

「文芸倶楽部」1929(昭和4)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,149 字 · 34 页

青空文庫

殺人鬼の正体

「お易いことじゃ」

不思議な約束は、斯うして成り立ちました。

殺人鬼の正体

「足の勇」の専横は、三月二十三日の夜が明けると同時に始まりました。実に横暴極まる主人で、雇人は申すまでもなく、瑛子も、照子も朝の食事の時は、もうすっかりこの新主人「足の勇」の気違い染みた専断に腹を立ててしまいました。

「相手は非常に危険な人物だ、容易の事では勝てない」

というのが「足の勇」の意見で、伯爵以下家族奉公人全部を、階下の大サロンに集め、四方の門は勿論、玄関も、勝手口も、あらゆる窓と云う窓を悉く閉め切ってしまいました。

サロンに集まった人間は全部で十五名、これがこの家に住む全員です。食事一切はパンと缶詰物で間に合せ、女中をお勝手へも立たせません。十五名全部に対して厳重に身体検査をして、兇器薬品類を持って居ない事を確めたことは申すまでもなく、尾籠な話ですが、一人では便所へ立つことも許さないと言う厳重な警戒振りです。

「何だってこんな事をなさるの坊ちゃん」

勝気者の瑛子は一番先に「足の勇」に喰ってかかりました。

「見えざる敵に備えるためです」

「そんな者は何処に居るの」

「書生の大川と、敬太郎さんがその敵にやられました。