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しのふくしゅう
死の復讐
国枝 史郎
「秘密探偵雑誌」1923(大正12)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,539 字 · 16 页
そして夫れから彼に執っては「運命の家」とも云う可き所のもう一連の草屋へ這入ったのであった。
曠野は月光で光っている。ドン河の水は銀箔のように白く鮮かに輝いている。哥薩克の部落は既に睡って燈火一つ見えようともしない。
曠野は寂しく静かである。
静かな曠野を驚かせて一隊の騎馬巡査が走って来た。
トントントントンと哥薩克の家を彼等は軒別にどやしつける。
「……斯う云う若者が此のあたりをブラブラ歩いてはいなかったか?」
鼻下の髭をピンと刎ね上げた警視ゴロネフは厳めしい声で嚇すような調子で訊くのであった。
「そんな野郎、知りましねえだ」
どの哥薩克もこんな調子で――快い睡を覚されたのが肝に障ったとでもいうようにぶっきら棒に云い放す。
「何? 知らないって! 嘘を吐け! 隠し立てをすると承知せんぞ!」
「それでも、そんな野郎、知りましねえだ」
彼等の答えは同じである。
ゴロネフ警視も仕方がないので馬を又先の方へ走らせる。
斯うして彼等は月光の下を鹿のように早く走ったが、小丘の頂上まで来た時に、目下に見える二軒の家の其一軒の背戸畑の辺で拳銃の音の起こったのを突嗟にハッキリ耳にした。