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しのふくしゅう
死の復讐
国枝 史郎
「秘密探偵雑誌」1923(大正12)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,539 字 · 16 页
そして其代わりに渋面が彼等の顔を占領した。彼等は互に眼を見合わせ、暫くじっと黙っていたが、突然「ワッ」と叫声をあげると人家のある方へ足を空にして一散に逃げ出した。
何が一体起ったのだろう? 彼等をそんなに恐れさせるどんな事が花畑にあったのだろう?
何者か種子を蒔く時に、文字形にそれを蒔いたと見えて種子から生い出た草花の花が文字形に崩れずに咲いている。そして其文字は斯うである――
「チホンが俺を殺したのだ」
噂は忽ち拡がった。部落の人々は云うのである。
執念というものは恐ろしい。殺されたイサクは地獄の底から真実の犯人を名差している。生前住んでいた屋敷の耕地へ秋草の花を媒介にして。
「チホンが俺を殺したのだと、怨みを述べているじゃ無いか。ほんとの犯人はチホンだったのだ。そう云えばチホンとイサクとは親の代から不和だった。チホンがイサクを殺したのだ。あの可哀そうな大学生は無実の罪で死んだらしい。贋の犯人が殺されて本当の犯人が生きていたでは成程イサクも浮ばれまい。その口惜しさが固まって耕地へ花文字を咲かせたのだろう」
間もなく噂は遥か彼方のロストフ市へも拡がった。