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しまでをかたる

死までを語る

直木 三十五

「話」1933(昭和8)年9月号~1934(昭和9)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 42,739 字 · 85 页

青空文庫

後になると、私自身が、それを造って食べていた。

家へ戻ると、中々、出してくれないし、玩具も、何も無いから、私は、チョークを買ってもらって、それで、押入の板戸へ、絵や、字を書き出した。小さい家で、大阪流に、中の間は、薄暗いが、その中で、夜になるまで、書いては消し、消しては書きして、板戸の下から、三尺位の上下は、白墨の白さが、しみ込んでしまっていた。

それから、間なしに、店と、中の間の間に、一尺四方位の硝子が、一間余り入ったので、嬉しくて堪らず、そこを又手習台にして、主として、絵を描いた。

時々、近所からの貰い物などがあるが、そういう物は、自分の生活とは、ちがった物のような気がして、例えば、菓子を食べても、それが無くなると、欲しいという感じは、絶対にしなかった。食べられないのが、本当で、食べるのは間違っているように、感じていた。

生れた時から、こうして育つと、貧乏を少しも、貧乏とは感じないものである。これが、誰でもの生活だ、というように――子供であるから、簡単に――たまたま友人の、広い家へ行っても、何の感じもなく、羨望も何も、起らなかった。

内安堂寺町の上の方に、尼寺があって、そこに、国宝の観世音が祭られているが、その縁日が、八の日に立つ。