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しいんのぎもん

死因の疑問

豊島 与志雄

「小説公園」1951(昭和26)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,260 字 · 27 页

青空文庫

ちょっと気づいたことを申しますと、清さんは夜遅くまで書物に読み耽ってることがあったようです。たぶん、わたくしが後で見つけましたあの、登山とか仏教とかに関する書物だったのでしょう。夜中に、清さんの部屋に明るく電燈がついてるのを見て、わたくしは声をかけたことがありますが、はいとすぐ返事があって、これからすぐやすみますと言いました。

あとで近さんに聞きましたところでは、清さんは時折、眠られないことがあって、催眠剤を用いていたらしゅうございます。あの吹雪の晩、ほんとうに買物があったとしますれば、それはたぶん催眠剤ではなかったろうかと、なぜかそのような気が致します。

それから或る時、清さんと近さんとのおかしな会話を、わたくしは耳に入れたことがあります。近さんはその日、外で、聾唖者同志の対話を見て来たらしく、たぶんその真似でもして、感心しているようでした。

「そんなの、ばかげてるわ。」と清さんが言いました。

「だってあんた、指先で話が出来るようになるまでには、たいへんな苦労でしょう。」と近さんが言いました。

「だから、ばかげてると言うのよ。あたしだったら、そんなばかな勉強はしない。