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じゅんし

殉死

山本 周五郎

「キング」大日本雄辯會講談社、1943(昭和18)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,737 字 · 21 页

青空文庫

――そうだ、それにちがいない。

五日いらい自分のあたまから去らなかった思案が、そう思い当ったときあらためてはっきりと意識の表面へあらわれてきた、それで主馬は誦経をやめてふりかえった。しかしかれが口をきろうとするまえに、家扶の案内で富沢右市郎がはいって来た。「どうした、まだ知れないか」待ちかねていたように五郎兵衛がきいた。右市郎はあるじに会釈して坐った。「ようやくわかった」「どこにいた」「鳳源寺の墓前にいた、いや」とかれはみんなのおどろきを抑えるように、「大丈夫なにごともない、無事だった、御墓前にお伽をしていただけだ」「やる心配はないのか、誰かついているのか」「誰もついてはいないがたしかだ、おれが逢ってよく話して来たんだ、かれもそんなつもりはないらしい」この問答を聞きながら主馬は、「庄兵衛だな」とすぐに推察した。「もうわかったろう八島」久米五郎兵衛がふり向いて云った、「御葬礼が終るとまもなく福尾庄兵衛がどこかへみえなくなった、そこもとと福尾とはおそば去らずの御寵遇であった、もしや追腹でも切りはせぬかと老職がたのご心配で、福尾のゆくえを捜すのといっしょに、此処へもわれわれを遣わされたのだ」