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さつじんのはて

殺人の涯

海野 十三

「読書趣味」1933(昭和8)年10月創刊号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,631 字 · 6 页

青空文庫

その上に苦が手の警官までに顔を合わせねばならないじゃないか。何という損なことを私はやってしまったのだろう!」

そのとき入口がパッと左右に開いた。予想のとおり警官の姿が現れた。とうとう入って来たのだ。合鍵で開けたのに違いない。

警官は私の傍に近づくと、無言の儘、液体を覗きこんだ。

私はウンウン呻りながら夢中になって白い液体を掻き廻わした。

警官は何にも言わない。何も言わぬだけ、私の心臓は警官の掌のうちに握られているように無気味だった。液体を掻きまわしている腕が気のせいか、何となく利かなくなるようだ。

液面に触れんばかりに顔を近づけていた警官がウムと呻った。私はドキンとした。なんだかチラリと赤いものが、液の中からみえたように思った。だがよくよく見ると、矢張り白い液体が渦を巻いているだけだ。私は平気を装った。

だがその努力は間もなく空しくなってしまった。例の赤い塊が、チョロチョロと液面に浮き上って来たのだった。私は慌てて力を入れると急速に掻き廻わした。すると意地悪く、強く掻き廻わせば掻き廻わすほど、ポクリポクリと赤い塊が数を増して浮き上ってきた。私は恐怖に真青になって、液体を掻き廻わした。