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さつじんめいろ

殺人迷路

江戸川 乱歩

05 (連作探偵小説第五回)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,041 字 · 17 页

青空文庫

インパーフェクト・クライム

「で犯行の手掛は? 被害者の身許が分らないとすると、せめて、犯人の手口を示す、一寸した証拠でも残ってはいなかったかしら」

正岡警部が鎌倉署長の顔色を読むようにして尋ねた。というのは署長の困惑した表情の奥に、何だか妙なものが、一縷の希望みたいなものが感じられたからである。

「アア、その方の証拠なら、少しばかり蒐集してあるよ。第一にこれです」

署長は果して、待ってましたという調子で、ポケットから彼の常用のシガレット・ケースを取出すと、勿体らしくそれを開いて見せた。中にはエアシップが二本と、白紙に包んだ一枚の眼鏡の玉。云うまでもなく証拠品というのは、眼鏡の玉の方だ。

「触っちゃいけない。実にハッキリした指紋がついているんだ。これはもう一つの指紋と一緒に写真に撮って、今頃は署の方で現像が出来ている時分です」

「つまりその眼鏡の玉が、この部屋に落ちていたという訳ですね。近眼鏡らしいね。で、もう一つの指紋っていうのは、一体どこにあったんです」

正岡名探偵の顔が一寸緊張して、鋭い両眼が一際光って見えた。

「海岸の方に開いている裏口の、ドアの引手のガラス玉の表面に、二つも三つも、しかもそれが、この眼鏡の奴と全く一致しているんだ」